うれしいお知らせ

市野瀬慶子先生、李富莹研究員と石橋哲先生は、脳梗塞急性期においてLong non coding RNAを標的とした従来のアンチセンス核酸医薬の効果を飛躍的に向上する治療法の開発に成功しました。

 急性期の脳梗塞病巣では、血管や脳神経細胞内への脂質受容体を介した物質の取り込みが通常よりも亢進していることを発見しました。そこでDNA /RNAヘテロ2本鎖核酸(HDO)に脂質リガンドを結合し全身投与(経静脈的投与)し、脳梗塞の動物モデルへの薬剤送達効果・治療効果を検証しました。従来のアンチセンス核酸と比較して、病巣への薬剤送達・遺伝子抑制効果を飛躍的に向上させることを証明しました。治療効果として、脳梗塞モデルマウスの脳梗塞サイズや血管新生などのphenotypeも変化することが示されました。

この研究成果は、国際科学誌Molecular Therapy(IF11.454)に掲載され、医科歯科大学からプレスリリースしました。

https://www.tmd.ac.jp/press-release/20230306-1/

超急性期の脳梗塞病巣に対して静脈投与による薬剤送達が極めて困難であるという従来の課題を克服しえた技術です。今後の脳梗塞治療への応用が期待されます。

横田 隆徳

うれしいお知らせ

2016年からAMEDで行ってきた大型研究事業である 脳科学研究戦略推進プログラム事業 (融合脳) 「血液脳関門通過型抗アミロイドβオリゴマー抗体の創生によるアルツハイマー病の分子イメージング診断、治療法の開発及び発症メカニズムの解明」の研究成果が論文化されました。

天野晶子先生、三條伸夫先生が中心に川崎市産業振興財団ナノ医療イノベーションセンター 片岡一則教授、東京大学 中木戸誠講師や安楽泰孝特任准教授、大分大学 松原悦朗教授など多くの先生方と協力し、5年以上の歳月をかけて取り組んできたテーマです。

断片化抗体と、医科歯科大、東大で独自に開発した血液脳関門を効率的に通過するナノミセルの分子構造を利用して、断片化抗体の脳へのデリバリーを達成する技術の開発に成功しました。

これにより、アミロイドβ(Aβ)オリゴマーに対する断片化抗体とナノミセルを発展させた「抗体内包ナノマシン」をアルツハイマー病モデルマウスへ投与すると、神経毒性の強い複数のアミロイド種を除去し、脳の病理学的変化や認知機能の低下を抑制することを明らかにしました。さらに、抗体内包ナノマシンは、断片化抗体のマウスの血液脳関門通過量が、抗体単体投与の約80倍多いことも示しました。この研究結果はJournal of Nanobiotechnology (IF=9.429)に掲載され、東京医科歯科大学から1月31日にプレスリリースされ (https://www.tmd.ac.jp/press-release/20230131-1/)、NHK NEWS、朝日新聞、読売新聞、日経産業新聞、日経バイオテクで報道されました。

アルツハイマー病の初期に脳内に十分な抗体を供給するシステムと疾患修飾効果の実現、単独で種々の神経毒性アミロイド種を除去することができる抗体、抗体の断片化によりアミロイド関連画像異常の予防の可能性があることなど、これまでの抗体療法よりも安全で、効率的な治療法の開発への発展が期待されます。

横田隆徳