当科初代教授の塚越廣先生(享年92歳)のお別れの会

昨年末から肺炎で病気療養中でした当科初代教授の塚越廣先生が平成31年1月10日にご逝去されました。享年92歳でした。ご葬儀が家族葬でありましたことより、ご遺族のお許しをいただいて3月21日にお別れの会を、信州大学第3内科、東京大学神経内科との共同開催で学士会館において執り行いました。塚越先生にご指導いただいた方、ご縁のあった方が100人以上参列されました。以下の式次第にて、心のこもったお言葉をいただき、在りし日の塚越廣先生の厳しくも温かい指導を振り返り、参列者一同で塚越廣先生を偲びました。

【式次第】

参列者献花

開会の辞

東京医科歯科大学大学院脳神経病態学分野 教授  横田隆徳 先生

黙祷(1分間)

故人の紹介    日産厚生会玉川病院 院長    和田義明 先生

献杯        東京医科歯科大学 理事・副学長 田中雄二郎 先生

お別れの言葉

三井記念病院名誉院長      萬年徹 先生

信州大学名誉教授、全日本労働福祉協会 会長   栁澤信夫 先生

JAとりで総合医療センター 院長        新谷周三 先生

長岡西病院神経内科顧問・日本大学名誉教授    高須俊明 先生

筑波大学名誉教授        庄司進一 先生

東京女子医科大学名誉教授・メディカルクリニック柿の木坂院長 岩田誠 先生

国立精神・神経医療研究センター 理事長     水澤英洋 先生

金沢大学神経内科教授      山田正仁 先生

富士見高原医療福祉センター 名誉院長      井上憲昭 先生

山口大学大学院医学系研究科臨床神経学 教授   神田隆 先生

閉会の辞     信州大学医学部内科学第三教室 教授       関島良樹 先生

横田隆徳

「血液脳関門(blood-brain barrier、BBB)を通過してアンチセンス核酸を中枢神経系に送達する新技術の開発」

東京医科歯科大学 神経内科同門会員各位

我々の脳神経病態学分野と大阪大学大学院薬学研究科と徳島文理大学薬学部が共同で推進してきた「血液脳関門(blood-brain barrier、BBB)を通過してアンチセンス核酸を中枢神経系に送達する新技術の開発」の論文が、ドラッグデリバリーシステム(Drug Delivery System、DDS)の研究領域の中で最もインパクトファクターの高い雑誌であるJournal of Controlled Release(インパクトファクターは7.9です)に2018年5月12日に掲載され(https://doi.org/10.1016/j.jconrel.2018.05.010)、6月19日に論文のプレスリリースを本学で行いました(http://www.tmd.ac.jp/archive-tmdu/kouhou/20180619_2.pdf)。

血液脳関門では、脳微小血管内皮細胞同士をつなぐ密着結合(tight junction、TJ)が大きな障壁となっています。二細胞間の密着結合(bicellular tight junction、bTJ)を制御しても、アンチセンス核酸などの高分子医薬は血液脳関門を通過できないと考えられています。本研究では、最近になってその存在が知られ始めた三つの細胞の角が接する部位の密着結合(tricellualr tight junction、tTJ)を、アンギュビンディン1という蛋白質断片により制御するという新戦略を取り入れました。その結果、静脈注射したアンチセンス核酸が中枢神経系に効率的に送達され、標的RNAの発現が抑制されました。

この研究発表で、銭谷先生は7月29日の第18回遺伝子・デリバリー研究会でベストプレゼンテーション賞を受賞し、9月30日からシアトルで行われるThe 14th Annual Meeting of the Oligonucleotide Therapeutics Societyに向けてTravel Grantを受賞しました。また、䑓藏君は、同じくこの研究発表で、本学脳統合機能研究センター(CBIR)の第9回若手インスパイアシンポジウムで優秀賞口頭発表部門第1位を受賞しました。

我々は血液脳関門通過性ヘテロ核酸と血液脳関門通過型ミセルという2つの基盤技術を開発し、それぞれベンチャー企業を設立して、神経疾患への臨床応用の研究を推進してきました。今回開発した技術は3つ目の血液脳関門通過技術になります。ここに桑原先生、銭谷先生、臺蔵君の多大な努力と栄誉を称えたいと思います(写真は、銭谷先生が第18回遺伝子・デリバリー研究会でベストプレゼンテーション賞を受賞したときのものと、䑓藏君がCBIR第9回若手インスパイアシンポジウムで優秀賞口頭発表部門第1位を受賞したときのもの)。

横田隆徳

細胞質に存在するゲノムDNAの断片が遺伝子発現制御に関わることを発見

同門会員の皆様

少しおくれましたが、うれしいお知らせがあります。

当科の創生した新規の分子技術であるヘテロ核酸は高い細胞内活性がありますが、細胞内で短いDNA断片が遺伝子制御することは偶然とは思えず、内因性の細胞内機構の存在を想定して分子生物学的研究を進めてきました。今回、教室の浅田健特任助教らは、 がんなどの病的状態では知られていたゲノムDNAからのDNA断片の切り出しが、正常状態の細胞においても同様に起こっており、切り出された断片は細胞質に存在することを発見しました。そして、細胞質ゲノムDNA断片は、自身の細胞の遺伝子発現制御に関わることを見出し、さらには、エキソゾームで近隣の細胞に運ばれ、移動先の細胞においても遺伝子発現制御に関わっていることを発見しました。「細胞質に存在するゲノムDNAの断片が遺伝子発現制御に関わることを発見」は革新的な分子生物学的な基礎知見であり、この知見は期待通りヘテロ核酸のさらなる分子デザインに大変役に立っています。この研究成果はScientific Reportsに、2018年2018 年 6 月 に発表され、医科歯科大からプレスリリースされました。

http://www.tmd.ac.jp/archive-tmdu/kouhou/20180606_1.pdf

浅田健先生は、CRESTでの特任助教として2年半前から基礎研究者として、我々の若い先生への研究指導を含めて基礎研究を支えてもらってきましたが、この4月から国立がんセンター/理化学研究所の准教授として栄転されました。浅田健先生の栄誉をたたえて、当教室への貢献に感謝したいと思います。

横田隆徳

生体内で血液脳関門の機能を制御するバイオテクノロジーを開発

同門会員各位

嬉しい報告があります。我々の脳神経病態学分野と東京大学大学院薬学系研究科分子薬物動態学教室が共同で推進してきた「生体内で血液脳関門の機能を制御するバイオテクノロジーを開発」の論文がScientific Reportsに3月12日に掲載され(http://www.nature.com/articles/s41598-018-22577-2)、同日に論文のプレスリリースを本学(http://www.tmd.ac.jp/archive-tmdu/kouhou/20180313_1.pdf)と日本医療研究開発機構(AMED)(https://www.amed.go.jp/news/release_20180312.html)で行いました。

血液脳関門は様々な脳疾患で治療標的となる場所であり、生体内においてその機能を分子レベルで制御するバイオテクノロジーは医療や創薬の発展に必要ですが、実際に活用されているものは存在しません。我々の研究室では、アンチセンス核酸よりもはるかに高い効果を示し、既存のアンチセンス核酸の作用を汎用的かつ大幅に向上できるヘテロ核酸を開発していますが、本研究では、このヘテロ核酸をマウスの静脈内に投与することにより、血液脳関門の機能を分子レベルで制御することを実現したものです。

本研究は、約4年の歳月をかけて桑原宏哉先生と大学院博士課程(留学生)の宋金東君、大学院修士課程の下浦貴大君を中心に取り組んできたテーマです。血液脳関門の機能評価の実験では、東京大学大学院薬学系研究科の楠原洋之教授のグループにサポートしていただきました。ヘテロ核酸の論文としては、その概念や意義をNature Communicationsに発表して以来の2番目のもので、桑原先生、宋君、下浦君の多大な努力と栄誉を称えたいと思います(写真は下浦君が日本核酸医薬学会第1回年会で優秀発表者賞(川原賞)を受賞したときのもの)。

本研究はAMEDの革新的バイオ医薬品創出基盤技術開発事業などの支援のもとで行われたものです。ほとんどの核酸医薬は全身投与では大部分が肝臓に集積しますが、ヘテロ核酸は肝臓以外の臓器・組織、特に神経筋でも有望な結果が出ており、我々は同事業をはじめとした多くの公的なグラントや製薬会社からの支援を受けて、神経筋疾患の治療を目指したヘテロ核酸のさらなる開発に尽力しています。、ヘテロ核酸が臨床現場で使用されるまでさらに邁進していきたいと思っています。

横田隆徳

第19回福岡臨床研究奨励賞受賞

去る2017年3月30日、東京医科歯科大学医科同窓会の第19回福岡臨床研究奨励賞に特任助教の吉岡耕太郎先生が受賞いたしました。

受賞論文は脳梗塞急性期における発作性心房細動のリスク因子を検討し、独自の発作性心房細動の予測スコア(iPABスコア)を作成してその有用性を示した論文です(J Stroke Cerebrovasc Dis. 2015;24(10):2263-9)。原因不明の脳梗塞において、その後判明する原因の中で発作性心房細動が最も多く、二次予防となる抗凝固薬が適切に選択されず、誤った抗血小板薬の処方による出血リスクの増大が問題となっています。今回の研究は、石橋哲講師の指導のもと、横浜みなと赤十字病院、国立病院機構災害医療センターの2施設で行われました。iPABスコアの予測能は従来の発作性心房細動の予測方法よりも感度・特異度において上回る結果でした。

今後は脳梗塞患者における発作性心房細動の予測精度の更なる向上に向け、発展研究が計画されています。

Nature Communications掲載のお知らせ

嬉しい報告があります。我々の脳神経病態学分野と東京大学工学部が共同で推進してきた「血液脳関門を通過して効率的に脳内に薬剤を送達する技術」の論文がNature Communicationsに10月17日に掲載され(https://www.nature.com/articles/s41467-017-00952-3)、10月19日に論文のプレスリリースを行いました(http://www.tmd.ac.jp/press-release/20171026_1/index.html)。この論文発表は、10月29日のNHKの「朝のニュース」で放映され、12月7日の毎日新聞の「科学の森」など多くのメディアで大きく取り上げられました(5紙の紙面、20サイト以上のWeb掲載)。

我々の開発したBBB通過型ミセルは、グルコース濃度の変化に応答したBBBに発現するグルコーストランスポーター(Glut-1)の細胞内リサイクリングを利用して、抗体医薬や核酸医薬など従来神経疾患には適応困難であった高分子の脳への送達を初めて可能にした画期的な基盤技術です。抗体医薬の場合は通常は投与量の0.1%程度のところ、本技術を用いれば6%の高効率で脳に送達可能です。臨床的には空腹時に薬剤を注射してその後に食事をするという簡単な方法で脳内に薬やプローブを効率良く運ぶことができます。

さらに、この薬剤送達技術を社会実装するために本学と東京大学の双方発のバイオベンチャー「ブレイゾン・セラピューティクス」が設立され、本学の吉澤靖之学長の出席のもとでこちらもプレスリリースを11月1日に行いました(http://www.tmd.ac.jp/press-release/20171101_1/index.html)。

本研究は、東京大学工学部の片岡一則先生の研究室で開発しているナノテクノロジーを活用したものですが、当分野ではグルコース濃度の変化を利用するという新規の生物学的なBBB通過戦略の立案から、実験遂行、論文執筆に至るまで、5年以上の歳月をかけて桑原宏哉先生を中心に取り組んできたテーマです。医科歯科大と東大工学部の双方がなくしては完成しなかった研究であり、論文も特許も50%ずつの貢献とした正に医工連携の成果です。我々の分野が主体となった研究成果では、ヘテロ核酸技術に続いて2番目のNatureと名がつく記念すべき論文発表で、桑原先生の多大の努力と栄誉を称えたいと思います。

現在、本研究成果に基づき、我々の分野が中心となって、科研費(基盤研究S)による「血液脳関門通過性ヘテロ核酸の開発」や、AMED(融合脳)による「血液脳関門通過型抗アミロイドβオリゴマー抗体の創生によるアルツハイマー病の分子イメージング診断、治療法の開発及び発症メカニズムの解明」といった大型研究を推進しています。難治性脳神経系疾患に対して、核酸医薬や抗体医薬による根本治療に加えて、Aβオリゴマー、リン酸化タウやリン酸化シヌクレインを可視化するPET/SPECT/MRIの脳の分子イメージング開発を放射線医学研究所(現 量子研)と進めており、研究をさらに邁進していきたいと思っています。

横田隆徳

うれしいお知らせ(能勢先生感謝状)

神経内科同門会員各位

素晴らしいお知らせがあります。

能勢先生が先日東海道線電車の中で心肺停止した中年女性を救急蘇生をして、丸の内消防署と東京駅から感謝状いただきました。患者さんはその後、元気に回復されたとのことです。

写真は丸の内消防署長が大学までお越しになって、能勢先生に感謝状を渡された時の写真です。この後、消防庁や医科歯科大学のホームページにも紹介されるとの事でした。

昨年の馬嶋先生に続いて、能勢先生の勇気がある立派な行動に、同門の1人として誇りに思います。

横田隆徳

核酸医薬学会(OTS)のBoard of Directorに選出されました

当科教授の横田隆徳先生が、、欧米の核酸医薬の最大の学会である核酸医薬学会(OTS;Oligonucleotide Therapeutics Society)の執行部であるBoard of Director(14人)に全会員による直接選挙で選出されました。

会員の主体は科学者(PhD)で医学者(MD)は横田先生を含めて4人で、アジアからは初めての選出です。横田先生はもともとOTSのScience committee memberとして国際的に活動してきましたが、2015年に横田先生が中心になって日本に日本核酸医薬学会を設立、OTSとの連携関係を確立したこと、横田先生ご自身のヘテロ2本鎖核酸とそのバイオベンチャーであるRENA therapeuticsが欧米でも認知され始めてたことが、今回の選出の理由になったようです。

9月にDuchenne型筋ジストロフィー(DMD)へのアンチセンス核酸がFDAに迅速承認され、急速に核酸医薬の臨床応用が発展するなか、神経筋疾患はその中核であって、すでにALS,SMA,Myotonic dystrophy,FAP,多発性硬化症,ハンチントンの臨床試験が進行しています。日本は核酸医薬の臨床応用は欧米より遅れていますが、東京医科歯科大学はAMEDから日本の核酸医薬の研究開発拠点に指定され、臨床応用に向けて大きな発展が期待されています。全世界の核酸医薬の発展と日本がその中心になることに横田先生と東京医科歯科大学は期待されています。

第21回日本神経感染症学会総会・学術大会で天野永一朗先生が最優秀口演賞を受賞

大学医員の天野永一朗先生(現土浦協同病院)は、三條先生などの指導のもと第21回日本神経感染症学会総会・学術大会において「免疫不全症およびParvovirus B19感染症を背景に脳炎を発症した48歳女性例」の症例報告を発表して、見事に症例報告部門の最優秀口演賞を受賞されました。本発表は遅発性の免疫不全症を背景に、Parvovirus B19の持続感染と感染後の繰り返すParvovirus B19脳炎を発症した症例です。遅発性の免疫不全症に脳炎を合併した初の成人例であり、フローサイトメトリーで脾臓での血中抗原提示の障害が想定されるなど、病態の機序を考察しました。天野先生の受賞を神経内科同門の皆でお祝いをしてその栄誉を称えたいと思います。

横田隆徳

融衆太先生が第18回日本在宅医学会で最優秀演題賞を受賞

融衆太先生が7月16日に東京ビックサイトで行われた第18回日本在宅医学会で「在宅療養後病理解剖した筋萎縮性側索硬化症3例の在宅医合同CPC」の演題で最優秀演題賞を受賞されました。中野で剖検となった在宅ALSの3例剖検例CPCを在宅医と一緒に行った内容で,

病理側では内原俊記先生の貢献が大きい受賞です。また、在宅医学会側では川越正平先生(現在副代表理事)が終始支援してくださっていると聞いています。

融衆太先生、内原俊記先生の名誉を称え、日本在宅医学会最優秀演題賞受賞を同門一同で皆でお祝いしたいと思います。

横田