血液脳関門通過を可能にしたヘテロ核酸医薬の開発

8月12日に、永田哲也先生をfirst authorとして血液脳関門(BBB)通過型ヘテロ核酸の論文がNature Biotechnologyにon line publicationされました。静脈や皮下投与などの全身投与でBBBを越え、脳・脊髄の標的遺伝子を90%抑制できるヘテロ核酸の基盤技術を開発した報告です。高分子のBBB通過技術は当科からの報告が含めていくつかありますが、その圧倒的な効果と従来の核酸がBBBを通過しない点から有望な技術として評価されたと思います。御存知の通り、既に成果が出ている核酸医薬品であるヌシネルセンは脊髄性筋萎縮症で有効性を示して、神経変性疾患のブレイクスルーになりました。しかしながら一生涯にわたる繰り返す腰椎穿刺投与が必要であり、問題点の1つでしたが、それを解決するものです。2020年現在、Nature Biotechnologyのインパクトファクターは54.9で、Nature、ScienceやNature Medicineより上位にランクされており、生命科学では世界でトップとなっております。本論文は武田薬品と米国のIonis Pharmaceuticalとの共同研究成果ですが、当医局で開発したヘテロ核酸の一連の研究成果であり、今まで当医局主体の論文として、IFが40以上の超一流雑誌へのアクセプトは初めてのことです。本件は大学のホームページからAMEDと共同でプレスリリースしまして(https://www.tmd.ac.jp/press-release/202100813_1/)。、朝日、読売、毎日、日経などの主要新聞各紙で報道されました。また海外のサイエンス系のホームページにも大きくその内容が掲載されております。今後も、我々のサイエンス、テクノロジーによって神経難病の患者さんに根本治療開発が達成できように引き続き努力を続けたいと思います。

横田隆徳